飲食店経営ラボ

【飲食店の原価率】業界平均37.5%の現実と、数か月で店を畳まないための原価管理の基本

なぜ飲食店の原価率は上がり続けているのか

月末に原価率を計算して、ため息をついたことはありませんか。

食材価格の高騰が続く中、飲食業界の原価率は年々上昇している。かつて「原価率30%」が常識だった時代は過ぎ去り、現在の業界平均は37.5%まで上昇している状況だ。

ある都内の中華料理店(25席)の店長は、開業時に計画していた原価率30%が、実際の運営では45%に膨れ上がったという。食材価格の見積もりが甘く、在庫管理も曖昧だった結果、わずか数か月で店を畳むことになった。

この話は決して他人事ではない。原価率の管理を甘く見ていると、売上が順調でも利益が出ない状況に陥ってしまう。

では、なぜこれほど原価率のコントロールが難しくなっているのか。

原価率30%が理想論になってしまった3つの理由

結論から言うと、原価率30%を維持するのは以前より格段に難しくなっている。

まず食材価格の高騰が最大の要因だ。農林水産省のデータによると、外食産業の食材価格指数は2020年を基準として118.3%まで上昇している。つまり、同じメニューを提供していても、原価は約18%上がっている計算になる。

次に、人手不足による仕入れ業務の効率低下がある。以前なら複数の業者から相見積もりを取って最安値を選べたが、今は仕入れ担当者の時間が限られている。結果として、馴染みの業者から言い値で仕入れることが多くなり、原価率が上がりやすい。

3つ目が在庫管理の精度低下だ。忙しさに追われて食材の使用期限チェックが甘くなったり、発注量の調整が後手に回ったりする。廃棄ロスが増えれば、当然ながら実質的な原価率は上昇する。

業界全体が同じ課題を抱えているからこそ、原価率管理の巧拙が店舗の生存を左右する時代になっている。

ある和食店が原価率46.7%から36.8%に改善した「廃棄部分活用法」

東京・下北沢のある和食店(30席)では、魚の廃棄部分を活用することで原価率を劇的に改善した事例がある。

この店では、刺身用の魚を仕入れた際に出る頭や骨を、これまで廃棄していた。しかし、調理長が「もったいない」と考え直し、魚のアラを使った出汁やあら煮を新メニューとして導入することにしたそうだ。

結果として、歩留まり率が従来の40%から70%に向上。同じ仕入れ金額でより多くの料理を提供できるようになり、原価率は46.7%から36.8%まで下がった。

さらに、「本日のあら煮」として提供したメニューが常連客に好評で、客単価も300円ほど上昇した。廃棄コストの削減と売上向上の両方を実現できたという。

この事例の教訓は、原価率の改善は仕入れ価格を下げることだけではないということだ。食材の使い方を見直すことで、同じ仕入れ金額からより多くの価値を生み出すことができる。

ただし、この方法には一つ注意点がある。メニュー開発や調理手順の変更には時間とスキルが必要で、全ての店舗で真似できるわけではないということだ。

原価率管理の基本計算と理想的な経費配分

原価率の計算式は非常にシンプルだが、正しく運用している店舗は意外と少ない。

原価率 = 食材費 ÷ 売上 × 100

ここで重要なのは、分子の「食材費」には廃棄した食材の原価も含めることだ。使った分だけでなく、仕入れた分で計算しなければ正確な原価率は把握できない。

飲食店の理想的な経費配分は以下の通りだとされている:

  • 原材料費(原価率):30%
  • 人件費:30~35%
  • 固定費(家賃等):20~25%
  • 利益:10%

この配分で見ると、原材料費と人件費を合わせた「FLコスト」は売上の60~65%以内に収めるのが目安となる。FLコストが70%を超えると、固定費を差し引いた後の利益がほとんど残らない状況になる。

ある経営コンサルタントの話では、FLコスト55%未満なら優良店の水準だが、60%以上になると経営の見直しが必要なレベルらしい。

原価率だけを見るのではなく、人件費とセットで管理することで、より現実的な経営判断ができるようになる。

今週から始められる原価率改善の3つのステップ

原価率の改善は複雑に見えるが、基本的なステップを踏めば必ず効果が出る。

ステップ1:現状の正確な把握 まず1週間、全ての仕入れと廃棄を記録する。レシートとメモだけでも構わない。「なんとなく30%くらい」ではなく、実際の数字を把握することから始める。

ステップ2:廃棄率の測定 一般的な飲食店の廃棄率は3~5%と言われている。野菜の皮や魚のアラ、使いきれずに捨てた食材の金額を1週間記録してみる。廃棄率が5%を超えている場合は、発注量の調整や調理方法の見直しで大幅な改善が期待できる。

ステップ3:仕入れ先の見直し 馴染みの業者1社だけでなく、最低でも2社から見積もりを取る習慣をつける。忙しい時期でも月に1回は価格比較を行う。業務用食材の価格は業者によって10~20%の差があることも珍しくない。

これらのステップを順番に実行すれば、1か月以内に原価率の改善効果が見えてくるはずだ。完璧を目指さず、まずは現状より1~2%の改善を目標にすることが続けるコツでもある。

小さな改善の積み重ねが、数か月後には大きな差となって経営に現れる。