飲食店経営ラボ

【検証】原価率70%の看板メニューで月商620万円。高原価戦略が成功する3つの理由

シフト作成の締切日。また今月も何人かのバイトから連絡がない。

毎月この光景を見ている店長なら、きっと共感してもらえるはず。でも今日お話しするのは、シフトの話ではありません。原価率の話です。

なぜ原価率70%でも利益が出るのか

結論から言うと、看板メニューの原価率を意図的に高く設定することで、集客力を上げ、他のメニューで利益を回収する戦略が成功しているからです。

都内のある隠れ酒場では、看板メニューの原価率を70%に設定しながら、月商620万円、坪月商45万円を実現しています。この数字だけ見ると「赤字じゃないの?」と思いがちですが、実際には黒字経営を続けています。

その理由は単純で、70%の高原価メニューで客を呼び込み、原価率30〜40%の他のメニューで利益を確保する構造を作っているからです。高原価メニューは「集客装置」として機能し、店全体の売上を押し上げる役割を果たしています。

ある居酒屋が実践した「二枚看板+α」の仕組み

御徒町のある食堂では、17坪という狭い店舗で月商1100万円という驚異的な数字を叩き出しているそうです。

この店舗で実践されているのが「二枚看板+α」戦略。おでんと焼売という全く異なる2つの看板メニューに、釜めしをプラスした構成になっています。興味深いのは、これら3つのメニューが煮干し出汁という共通の要素でつながっていることです。

おでんを求めて来店した客層と、焼売目当ての客層。一見すると接点がなさそうな2つの客層を、煮干し出汁という共通要素で橋渡ししているのです。結果として、どちらかの看板メニュー目当てで来店した客が、もう一方のメニューも注文する確率が高くなっています。

この店舗の成功は、単に看板メニューの原価率を高くしただけではありません。複数のメニュー間に親和性を持たせることで、客単価の向上と客層の拡大を同時に実現しているのです。

高原価戦略が失敗する店の共通点とは

しかし、高原価戦略は必ずしも成功するわけではありません。

失敗する店の多くは、看板メニューで客を呼び込むことはできても、利益回収の仕組み作りができていないケースが多いようです。原価率70%のメニューで客を呼んでも、他のメニューの注文につながらなければ、単純に赤字が膨らむだけです。

成功している店舗に共通しているのは、看板メニューを軸とした「メニュー設計」ができていることです。高原価の看板メニューが、他の利益率の高いメニューへの導線として機能するような構成になっています。

ある朝7時から満席になる居酒屋の例では、従来の居酒屋のイメージを覆す時間帯設定で、出勤前や交代勤務者といったニッチな客層を狙い撃ちしています。このような「時間軸でのニッチ需要」を発見することで、競合との差別化を図っているのです。

高原価戦略を成功させるには、単に原価率を上げるだけではなく、客層の分析と導線設計が不可欠だということが見えてきます。

コスト管理の基本を見直す3つのポイント

では実際に、高原価戦略を検討する前に押さえておくべき基本的なコスト管理について整理してみましょう。

1. FLコストの適正比率を把握する

飲食店の経費管理では、FLコスト(食材費+人件費)を売上の50〜60%以内に抑えることが基本だとされています。食材費だけなら売上の28〜33%、人件費は25〜35%が目安です。

高原価戦略を取る場合でも、この基本比率からの逆算は必須です。看板メニューの原価率が70%だとしても、他のメニューで全体のバランスを取る必要があります。

2. 複数仕入れ先との関係構築

原価率をコントロールするには、仕入れ先との価格交渉力が重要になります。複数の仕入れ先と取引関係を築くことで、価格だけでなく品質・納期・緊急時の対応を総合的に判断できるようになります。

食材原価を売上の30%以内に管理するためには、季節変動や市場価格の変化に対応できる柔軟な仕入れ体制が不可欠です。

3. データに基づく意思決定

経験や勘に頼った原価管理ではなく、実際の数字に基づいて判断することが重要です。日々の売上・原価・客数のデータを記録し、どのメニューがどの程度の利益貢献をしているかを定量的に把握しておく必要があります。

明日から試せる原価率チェックの仕組み

原価率70%戦略を検討する前に、まず現在の店舗の原価構造を正確に把握することから始めましょう。

今週やるべき2つのアクション

1つ目は、全メニューの原価率を一覧化することです。レシピと仕入れ価格から、1品ずつ正確な原価を算出してください。意外と「なんとなく」で設定している価格が見つかるはずです。

2つ目は、客単価への貢献度分析です。各メニューが注文される頻度と、そのメニューを注文した客の平均客単価をセットで記録してください。原価率は高くても、客単価を押し上げる効果があるメニューが見えてくるかもしれません。

高原価戦略は確かに効果的な手法の一つですが、まずは自店の現状を数字で把握することが最初の一歩。そこから見えてくる課題に応じて、戦略を組み立てていくのが確実な方法だと思います。