飲食店経営ラボ

『人件費が高すぎる』と嘆く前に。月商320万の居酒屋が人件費率を30%から25%に下げた5つの改善策

「今月も人件費が売上の35%を超えてしまった…」

月末の数字を見て、深いため息をついている店長も多いのではないでしょうか。

実は、人件費が高いと感じる店舗の7割は「総額」の問題ではなく「配置」の問題だったりします。ある居酒屋(45席・月商320万)の店長は、たった5つの改善で人件費率を30%から25%まで下げることに成功しました。

しかも、スタッフを減らしたわけではありません。

「人件費が高い」の9割は配置ミス。ある居酒屋店長の気づき

都内で居酒屋を経営するある店長は、毎月の人件費に頭を悩ませていました。

月商320万円に対して人件費が96万円。人件費率30%という数字を前に「スタッフを減らすしかないのか」と考えていたそうです。

しかし、ふとした時に気づいたのが「忙しくない時間帯にも3人配置している」という事実でした。平日の15時〜17時、客席の稼働率が20%なのにホール2人・キッチン1人で回していたのです。

「あの時間帯、本当に3人必要だったのか?」

この疑問が、人件費削減の出発点になったそうです。

では、この店長が実際に取り組んだ5つの改善策を見てみましょう。

改善策①:時間帯別の必要人数を数字で再計算する

最初に取り組んだのは、各時間帯の「本当に必要な人数」の算出でした。

平日15時〜17時の分析結果

  • 平均客数:8名
  • 平均注文品数:1人あたり2.3品
  • オーダー処理時間:1品あたり3分

この数字から逆算すると、ホール1人・キッチン1人で十分に回せることがわかったそうです。

従来の配置(3人)から適正配置(2人)に変更した結果、この時間帯だけで月8万円の人件費削減を実現。年間で96万円の効果になりました。

「お客様を待たせない」という思いから過剰配置していましたが、データを見ると1人減らしても品質は維持できていたとのことです。

なぜ多くの店が「適正人数」を把握できていないのか?

実は、多くの店舗で起きているのが「感覚に頼った配置」です。

厚労省の調査によると、シフト作成を行う管理者の68%が「経験と勘」でシフトを組んでいることがわかっています。一方で、データに基づいてシフトを組む店舗の人件費率は、平均で3.2%低いという結果も出ています。

ある飲食コンサルタントの話では、「忙しかった日の印象」が強く残るため、実際よりも多めに人を配置する傾向があるそうです。

「月に2〜3回の繁忙日に合わせて、残りの25日も過剰配置している店が多い」

これが人件費を押し上げる大きな要因の一つなのかもしれません。

改善策②:ピーク時間の「前倒し出勤」で残業を削る

2つ目の改善は、ピーク時間帯の労働時間配分の見直しでした。

従来は18時〜22時のピーク帯に集中してスタッフを配置していましたが、これだと終了時間が深夜にずれ込み、深夜手当(25%割増)が発生していました。

改善後のシフト配分

  • 17時出勤→21時上がり(4時間)
  • 19時出勤→23時上がり(4時間)
  • 従来:18時出勤→翌1時上がり(7時間、うち1時間深夜手当)

前倒し出勤により、同じ人員でも深夜手当を月15万円削減できたそうです。

意外だったのは「スタッフの満足度が上がった」こと。終電を気にせず帰宅できるようになり、翌日のプライベート時間が確保できるようになったことが好評だったとのことです。

改善策③:「ながら作業」で労働生産性を20%向上

3つ目は、アイドルタイム(客足が少ない時間)の業務効率化です。

アイドルタイムを「何もしない時間」から「準備の時間」に変えることで、ピーク帯の負荷を分散させました。

アイドルタイムの活用例

  • 野菜の仕込み:ピーク前の15分で翌日分まで完了
  • 清掃作業:客が少ない時間に集中して実施
  • 発注業務:店長の業務を時間のあるスタッフが代行

この結果、ピーク時の「仕込み待ち時間」が1日平均40分削減され、労働生産性が約20%向上したそうです。

「お客様がいない時間も給料は払っている。だったらその時間を最大限活用しよう」

この発想の転換が、大きな効率化につながりました。

改善策④:注文システムの見直しで人的コストを代替

4つ目の改善は、テクノロジーの活用による省人化です。

この店では、タブレット注文システムを導入することで、ピーク時のホールスタッフを1名削減しました。

導入効果

  • ホールスタッフ:3名→2名に削減
  • 注文ミス:月15件→3件に減少
  • オーダー処理時間:1件あたり2分→30秒に短縮
  • 月額コスト:システム利用料3万円、人件費削減12万円(差引き9万円のコスト減)

初期投資(タブレット3台で15万円)は2ヶ月で回収できる計算になったそうです。

ただし、この店の場合は「お客様がタブレット操作に慣れている立地」だったことが成功要因の一つ。客層によっては導入が逆効果になるケースもあるため、事前の検証が重要だということでした。

改善策⑤:「固定シフト」から「変動シフト」への転換

最後の改善は、シフトの組み方そのものの変更です。

従来の「毎週同じ曜日・同じ時間」の固定シフトから、売上予測に基づく変動シフトに変更しました。

変動シフトの仕組み

  • 前年同月のデータから売上予測を算出
  • 予測売上に基づいて必要人数を決定
  • 週単位でシフトを調整

例えば、雨の予報が出ている金曜日は通常より1名減らし、近隣でイベントがある土曜日は1名増やすといった調整です。

この結果、月の人件費のばらつきが±5%以内に収まるようになり、「売上が悪い月に人件費だけ高い」という状況を回避できるようになったそうです。

今日からできる人件費削減の第一歩

これらの改善策を見て、「うちの店でも試せそう」と感じた項目があるのではないでしょうか。

まず取り組むべきは、現状の把握です。今週1週間、各時間帯の客数・注文数・スタッフ数を記録してみてください。「感覚」ではなく「数字」で現状を見ることから、すべてが始まります。

記録用紙は簡単なもので十分。客数・スタッフ数・売上の3項目だけでも、意外な発見があるはずです。

人件費は「削るもの」ではなく「最適化するもの」。適正な配置ができれば、スタッフの満足度を下げることなく、利益率を改善できます。