飲食店経営ラボ

人件費30%以内は正解?売上300万円の店が見落としがちな3つの落とし穴

「人件費は売上の30%以内に抑えろ」と言われ続けている飲食店の店長へ。

その数字だけを追いかけていると、思わぬところで店の首を絞めているかもしれません。

なぜ「30%以内」だけでは危険なのか?

人件費30%という数字は確かに重要な指標です。しかし、この数字だけに縛られると3つの落とし穴が待っています。

ある都内の居酒屋(25席)の店長は、人件費率28%を維持していることに誇りを持っていました。毎月のシフト作成でも、この数字を超えないよう細心の注意を払っていたそうです。

ところが、3ヶ月後にこの店長は大きな問題に直面することになります。離職率が60%を超え、常に人手不足。結果的に店長自身が週6日出勤する羽目になったのです。

人件費率という「数字」は守れたものの、店の「現実」は崩壊寸前だったわけです。

落とし穴1:時間帯別の配置効率を無視している

人件費30%という全体の数字ばかり気にしていると、時間帯ごとの効率性が見えなくなります。

月商300万円の店舗であれば、1日平均10万円の売上。しかし実際は、ランチタイム4万円、ディナータイム6万円といった具合に偏りがあるはずです。

問題は、売上の少ないアイドルタイム(14時〜17時)にも、ピーク時と同じ人数を配置してしまうケース。全体の人件費率は30%でも、アイドルタイムだけ見ると人件費率が80%を超えている、なんてことが起こります。

ある焼肉店(30席)では、14時〜17時の時間帯の人件費率を個別に計算したところ、なんと95%でした。この時間帯だけで月15万円の赤字を垂れ流していたそうです。

シフトを組むときは、全体の数字と同時に時間帯別の効率も見る必要があります。

落とし穴2:スキルレベルを考慮しない配置をしている

人件費を抑えることばかり考えていると、「とにかく人数を減らせばいい」という発想になりがちです。

しかし、経験豊富なベテランバイト1人と、新人2人では、同じ時給でも生産性が全く違います。

ある中華料理店(20席)の店長の話です。人件費を下げるため、時給1,200円のベテランホールスタッフを減らし、時給1,000円の新人を2名配置することにしました。

計算上は人件費が下がるはずでした。ところが、新人2名では注文ミスが頻発し、お客様からのクレームが月3件から15件に増加。結果的に客足が遠のき、売上が前月比15%ダウンしたそうです。

人件費率は確かに29%から26%に改善されました。しかし、売上が下がったため、実際の人件費総額はほとんど変わらなかったのです。

落とし穴3:店長の労働時間をコストに含めていない

これが一番見落とされがちな落とし穴です。

人件費30%という計算に、店長自身の人件費を含めていない店が驚くほど多いのです。店長も立派な労働力であり、本来なら時給換算でコストを考えるべき存在です。

例えば、店長が月200時間働いているとしましょう。もし外部から同レベルの管理者を雇うなら時給2,000円は必要でしょうから、月40万円のコストです。

月商300万円の店舗なら、店長の人件費だけで13%。バイトの人件費と合わせると、実質的な人件費率は43%になってしまいます。

ある定食屋(15席)の店長は、バイトの人件費を18%に抑えていることを誇りにしていました。しかし、彼自身が月250時間働いていることを時給換算すると、実質的な人件費率は50%を超えていたそうです。

店長の時間も有限なリソース。これを無制限に使っていては、本当の意味での効率化はできません。

今週やるべき1つのこと:時間帯別人件費率を計算してみる

来週のシフトを組む前に、1つだけ試してほしいことがあります。

過去1ヶ月の売上を、4時間刻みで区切ってください。そして、その時間帯に配置したスタッフの人件費を計算し、売上で割ってみてください。

多くの店で、アイドルタイム(14時〜18時)の人件費率が60%を超えているはずです。

この数字が見えれば、どの時間帯のシフトを見直すべきかが一目瞭然になります。全体を30%に抑えることも大切ですが、まずは明らかに効率の悪い時間帯から手をつける方が現実的です。

ちなみに、時間帯別の分析をした店の8割が、アイドルタイムのスタッフを1名減らしただけで月10万円以上のコスト削減を実現しています。

人件費30%という目標は大切です。しかし、その数字の裏にある「配置の効率性」や「スキルとコストのバランス」まで見えてくると、もっと現実的で持続可能な店舗運営ができるようになります。