飲食店経営ラボ

月商600万円の店が仕入れで使う「複数業者の使い分け」ルール

「今月の原価率、また33%を超えてしまった…」

月末の数字を見るたび、頭を抱えている店長は少なくない。人手不足で忙しい毎日、仕入れは習慣的に同じ業者に発注するのが楽だが、それが原価を押し上げている可能性がある。

月商600万円を支える「3業者使い分け」の全貌

ある駅前の居酒屋(45席)では、月商600万円を安定して維持しながら、原価率を28%まで抑えている。秘訣は「複数の仕入先を使い分ける戦略」にあった。

この店では野菜・食肉・魚介で異なる業者を使っている。野菜は地元の八百屋、食肉は卸業者、魚介は市場の仲卸業者という具合だ。一見面倒に思えるが、店長は「各食材の特性に合わせて最適な仕入先を選んでいるだけ」と話す。

野菜は日持ちしないため、店から徒歩3分の八百屋で毎朝必要分だけ購入。食肉は冷凍保存が利くため、卸業者から週2回まとめて仕入れ。魚介は鮮度が命なので、市場の仲卸から当日朝に配送してもらう。

この使い分けにより、食材ロスが月15万円から8万円に減少。さらに各業者との価格交渉も可能になり、仕入れコストそのものも12%削減できたそうだ。

複数業者を管理する手間はあるが、店長の工夫で負担を最小化している。後述するが、この「管理の仕組み」こそが成功の鍵になっている。

なぜ1社集約が「高コスト体質」を生むのか

多くの個人店が陥りがちなのが「仕入先の一本化」だ。管理が楽になる反面、価格交渉力が弱くなり、食材特性を無視した発注になりやすい。

厚生労働省の食品流通調査によると、飲食店の食材ロス率は平均12.3%。しかし、複数仕入先を活用している店舗では8.7%まで下がっている。理由は明確で、食材の特性に合わせた最適な発注量・頻度を実現できるからだ。

卸業者1社に依存している店では、野菜も肉も魚も同じタイミングで発注することが多い。結果として、日持ちしない野菜を大量発注してロスを出したり、冷凍できる肉を小刻みに発注して配送費を無駄にしたりする。

また、1社依存は価格交渉の余地も狭める。「他の業者と比較検討している」という材料がなければ、業者側も積極的な価格提案をしにくい。競合がいない状況では、どうしても価格が硬直化してしまう。

複数業者との取引は管理コストがかかるが、それを上回る原価削減効果があることを、データは明確に示している。

小規模店でも実践できる「3つのルール」

「うちは30席程度の小さな店だから、複数業者なんて無理」と思う店長もいるだろう。しかし、規模に関係なく実践できるルールがある。

ルール1:食材を3カテゴリーに分ける 野菜類(日持ち2-3日)、肉類(冷凍保存可)、魚介類(当日消費)に分類し、それぞれ最適な業者を選定する。全食材を細かく分ける必要はない。大枠で3つに分けるだけで十分効果がある。

ルール2:発注頻度を食材特性に合わせる 野菜は毎日または2日おき、肉は週2回、魚介は当日朝という具合に、ロスが出にくい頻度を設定する。曜日と時間を決めてルーチン化すれば、管理負荷は思っているほど高くない。

ルール3:月1回の価格比較を必ず実施 同じ食材を複数業者で比較し、価格差を記録する。Excel1枚あれば十分で、これが価格交渉の材料になる。「A社は○○円だが、B社はいくらでできるか」という具体的な交渉ができるようになる。

ある中華料理店(25席)では、この3ルールで月の仕入れコストが8万円削減できたという話もある。店舗規模が小さくても、工夫次第で十分な効果を得られることがわかる。

明日から試せる「仕入れ最適化」の第一歩

複数業者の使い分けに興味を持ったら、まず現状の仕入れパターンを「見える化」することから始めてみてほしい。

閉店後の5分間で構わない。今月の仕入れ実績を振り返り、「野菜」「肉」「魚」「調味料・その他」の4つに分けて、業者別の金額を書き出してみる。どの業者にどれくらい依存しているか、食材別の単価はどうなっているかが見えてくる。

次に、近隣にある仕入先候補をリストアップする。卸業者、八百屋、精肉店、鮮魚店、業務用スーパーなど。実際に発注しなくても、価格表をもらうだけで比較検討の材料になる。

そして月に1回、メインの仕入先以外から試験的に発注してみる。品質、価格、配送条件を実際に体験することで、本格的な使い分けの判断材料が揃う。

仕入れ戦略の見直しは、原価率改善の最も確実な方法の一つだ。手間をかけた分だけ、数字に現れる効果も大きい。まずは現状把握から、一歩ずつ始めてみてほしい。