飲食店経営ラボ

店長が休めない本当の理由は『責任感』ではない。シフト管理の3つの構造問題と今すぐできる解決策

「店長なんだから休めなくて当たり前」。本当にそうでしょうか。

月に1日も休めない飲食店の店長が多いのは事実です。しかし、その原因を「責任感が強いから」「人手が足りないから」と片付けてしまうのは、根本的な問題を見逃している可能性があります。

実は、店長が休めない最大の理由は、シフト管理の仕組みが「店長ありき」で設計されていることにあります。希望シフトの回収方法、急な欠勤への対応、スタッフの配置判断。これらが全て店長の頭の中にあり、誰にも任せられない状態になっているのです。

なぜシフト管理は店長にしかできない仕事になってしまうのか

ある都内の居酒屋(25席、バイト8名)の店長から聞いた話があります。

この店長は毎月のシフト作成に約4時間をかけていました。希望シフトの回収は紙とLINE、口頭がバラバラで、誰がいつまでに提出したかを把握するだけで30分。急な欠勤があると、個別に連絡を取って代わりを探すのに1時間以上かかることもあったそうです。

最も困っていたのは、スキルとシフトの組み合わせでした。「A君は調理場が得意だけど土曜の夜は入れない」「Bさんはホールのエースだけど平日しか無理」といった情報が全て頭の中にあり、それを踏まえてシフトを組める人が他にいませんでした。

なぜこうなってしまうのでしょうか?

シフト管理が属人化してしまう構造的な問題は、大きく3つあります。希望シフト回収の仕組みが統一されていない、急な欠勤に対するルールがない、そしてスタッフの適性やスキルレベルが「なんとなく」で管理されていることです。

これらの問題を放置すると、結果として店長が全てを抱え込まざるを得なくなります。

希望シフト回収の属人化を解消する3つのステップ

まず最初に取り組むべきは、希望シフトの回収方法を統一することです。

紙で提出する人、LINEで送る人、口頭で伝える人がバラバラな状態では、店長が個別に管理するしかありません。この状況を変えるには、3つのステップが有効です。

第一に、提出方法を一本化します。全員がLINE公式アカウント(プライベートアカウントではない)で希望を提出するルールにするか、店に置いた専用のノートに書いてもらうか、どちらか一つに決めてしまいます。

第二に、提出期限を「見える化」します。「月末までに」という曖昧な指示ではなく、「毎月25日の営業終了まで」と明確にし、店内に掲示します。期限を過ぎた場合のルール(「希望なしとみなす」「次月は希望を通しにくくする」等)も同時に決めておきます。

第三に、提出状況を全員が確認できる仕組みを作ります。壁に貼ったチェック表でもよいので、誰が提出済みで誰が未提出かが一目でわかるようにします。

ある中華料理店(15席)では、この仕組みを導入した結果、希望シフトの催促にかかる時間が月2時間からゼロになったそうです。

急な欠勤対応の仕組み化で店長の負担を半減させる

二つ目の問題は、急な欠勤への対応です。

多くの店では、欠勤の連絡を受けた店長が個別に他のスタッフに連絡を取って代わりを探しています。この方法では、店長がいないときの欠勤対応ができず、結果として店長が24時間連絡を受ける状態になってしまいます。

解決策として、急欠対応の「順番リスト」を作ることをお勧めします。

曜日ごと、時間帯ごとに「この人が休んだら、まずこの人に連絡、ダメなら次はこの人」という優先順位を決めておくのです。スキルレベルや希望勤務日を考慮して作成すれば、主任やベテランスタッフでも対応できるようになります。

さらに効果的なのは、「ヘルプ募集の仕組み」を作ることです。LINEグループで急欠の情報を共有し、対応できる人が手を挙げる方式にすれば、店長が個別に連絡する手間が省けます。

ある焼肉店(40席)では、急欠対応リストを作成した結果、店長以外のスタッフでも8割の急欠に対応できるようになり、店長の休日中の連絡が月5回から1回に減ったという話があります。

スキル管理を「見える化」して配置判断を脱属人化する

三つ目の問題は、スタッフのスキルや適性が店長の頭の中だけにあることです。

「この人はピーク時に任せられる」「この人は新人の指導ができる」といった情報が属人的だと、シフトの最終判断を店長以外ができなくなってしまいます。

この問題を解決するには、スタッフのスキルレベルを「見える化」することが必要です。

簡単な方法として、調理とホールそれぞれについて3段階(初級・中級・上級)でレベル分けし、表にまとめることから始めます。さらに、「ピーク時対応可能」「新人指導可能」「クロージング対応可能」といった特殊スキルも併記します。

この表があれば、主任クラスのスタッフでもバランスを考えたシフト組みができるようになります。

また、各時間帯に必要な最低人数とスキル構成(「調理2名以上、うち1名は中級以上」等)をルール化しておけば、判断基準も明確になります。

ある居酒屋チェーン(200店舗規模)の人事担当者の話では、スキル表を導入した店舗は、副店長でもシフト作成ができるようになり、店長の月間労働時間が平均15時間短縮されたそうです。

今週から始められる「店長が休める仕組み」づくり

これらの問題を一度に解決しようとする必要はありません。

まずは今週から、希望シフトの提出方法を統一することから始めてください。全員にLINE公式アカウントでの提出を促し、期限を明確に伝えるだけでも、来月のシフト作成時間は確実に短縮されます。

次に、来月までに急欠対応の優先順位リストを作成します。過去3ヶ月の欠勤パターンを振り返り、誰が休んだときに誰に連絡を取ったかを整理すれば、自然と優先順位が見えてきます。

最後に、スタッフ全員のスキルレベルを表にまとめます。完璧である必要はありません。現時点での大まかな評価で構いないので、まずは「見える化」することが重要です。

店長が休めないのは、決して責任感が強すぎるからではありません。仕組みが整っていないだけです。シフト管理の属人化を解消すれば、店長も安心して休むことができ、結果として店舗運営全体の安定性も向上します。