飲食店経営ラボ

【月80時間削減の実話】紙シフトから脱却した焼肉店が手に入れた「考える時間」

駅前の焼肉店(30席)を経営する店長の話を聞いたことがある。月商は安定して400万円。人件費率も28%で一見問題なし。でも彼は毎日終電で帰宅していた。

人件費30%以内でも店長が疲弊する現実

「人件費は売上の30%以内」。飲食業界でよく聞くこの数字を守っている店長は多い。厚労省の調査でも、飲食サービス業の人件費率は平均29.2%。数字だけ見れば「合格」だ。

でも、ある焼肉店の店長は違和感を抱いていた。

月商400万円、人件費112万円(28%)。数字は理想的。それなのに彼は月に80時間もシフト管理に費やしていた。希望シフト回収、転記、調整、催促、急な欠勤対応。全てが手作業だった。

「数字が良ければそれでいいのか?」と彼は考えるようになった。人件費率が低くても、店長が倒れたら意味がない。

シフト管理の見えないコストを計算してみた結果

この店長が「シフト管理にかかる時間」を詳しく計算してみたところ、衝撃的な事実が判明した。

月80時間のシフト管理。店長の時給を2,500円と仮定すると、月20万円のコストが隠れていることになる。年間240万円だ。これは人件費として計上されない「見えないコスト」だった。

さらに深刻だったのは、店長の精神的負担。毎週火曜日の希望シフト締切日になると、LINEを何度もチェック。未提出者への催促で1日が終わる。売上向上や新メニュー開発など「本当にやりたい業務」に時間を割けない状態が続いていた。

ある経営コンサルタントの話では、「店長の時間単価を意識している飲食店は全体の2割未満」だそうだ。人件費の数字ばかりに注目して、店長自身の時間価値を見落としている店は意外に多い。

「考える時間」を取り戻した3つの変化

この店長は思い切ってシフト管理をデジタル化することにした。システム導入により、以下の変化が起きた。

希望シフト回収の自動化 LINEでの個別催促がゼロになった。システムが自動でリマインドを送信し、未提出者をリスト化。店長の作業は「リストを見て声をかける」だけになった。

転記作業の完全消去 手書きの希望シフトをExcelに転記する作業(月15時間)が消えた。スタッフが直接システムに入力するため、転記ミスもゼロ。

急な欠勤対応の高速化 以前は欠勤連絡が来ると、手書きのシフト表を見ながら「誰が入れるか」を一人ずつLINEで確認していた。システム導入後は、空いているスタッフを一覧表示。連絡も一斉送信で済むようになった。

結果、月80時間のシフト管理が月20時間に短縮。浮いた60時間で、この店長は何をしたか。

店長が本当にやるべき仕事に集中できるようになった話

60時間の「考える時間」を手に入れた店長は、これまで後回しにしていた業務に着手した。

競合店の視察に月2回行けるようになった。近隣に新規オープンした焼肉店の価格設定、メニュー構成、接客スタイルを詳しく分析。自店との差別化ポイントを見つけ、新メニューを3品追加した。

スタッフとの1対1面談も月1回実施できるようになった。以前は「忙しくて話す時間がない」状態だったが、今では各スタッフの悩みや要望を聞く時間を確保。結果的に離職率が40%から15%に下がった。

数字上の人件費率は28%のまま変わらない。でも「店長の時間コスト」「スタッフの満足度」「新規施策への投資時間」は大幅に改善した。

明日から試せる「時間コスト」の見える化

人件費30%ルールは大切だが、それだけでは不十分かもしれない。店長の時間コストも含めて考えてみてはどうだろうか。

自分の時間コストを計算する 店長の月給を時間で割ってみよう。月給40万円、月200時間労働なら時給2,000円。シフト管理に月20時間使っているなら、月4万円のコストが発生している計算になる。

「考える時間」を意識的に作る 週に1時間でいい。競合視察、新メニューの検討、スタッフとの面談など、「今日やらなくても店は回るが、長期的に重要な業務」に時間を使ってみる。

作業と判断を分ける シフト管理の中で「作業」と「判断」を分けて考える。転記、催促は作業。人員配置の最終調整は判断。作業は極力システムやスタッフに任せ、店長は判断に集中する。

人件費の数字だけでなく、店長自身の時間価値も経営指標として考える時代になったのかもしれない。