飲食店経営ラボ

月商1000万円でも原価率30%。低客単価店が高収益を生み出すカラクリとは

都内のあるピザ店では、1/8カットのピザを約150円で販売している。客単価はわずか1200円。しかし、この店の月商は1000万円を超えるという。「安いものを売って儲かるわけがない」そう思い込んでいませんか?

客単価1200円で月商1000万円の店が実際に存在する

都内中心に6店舗を展開するニューヨークスタイルのピザ店では、1/8サイズのカット売りを基本コンセプトとして、2013年の開業から順調に店舗数を増やし続けているそうです。

この店の客単価は約1200円。一般的な飲食店と比べると決して高くない数字です。しかし、月商1000万円を売り上げる店舗も存在すると聞きました。

なぜこのような収益構造が可能なのか。実は、低客単価店には低客単価店なりの戦略があります。単純に「安い=儲からない」という図式ではないのです。

この事例から見えてくるのは、客単価と売上の関係に対する私たちの思い込みかもしれません。

高収益の秘訣は「回転率×提供効率」にある

低客単価で高売上を実現する飲食店の共通点は、徹底的な効率化です。

客席回転率の最大化が最も重要な要素となります。1/8カットのピザなら、お客様の滞在時間は通常のピザ店より短くなる。立ち食いスタイルなら、さらに回転が早まります。

仮に客単価1200円で月商1000万円を達成するなら、月間約8300人のお客様が来店していることになります。30日で割ると1日あたり約277人。営業時間を12時間とすれば、1時間あたり約23人が来店している計算です。

提供スピードの短縮も重要な要素です。カット売りなら注文から提供までの時間が大幅に短縮できます。焼き立てのピザを常に用意しておけば、注文後すぐに提供可能です。

この「速さ」が、客席回転率と人件費効率の両方を改善します。

なぜ「低単価=低利益」の思い込みが生まれるのか

多くの飲食店経営者が「客単価を上げなければ利益が出ない」と考える理由は何でしょうか。

従来の飲食店モデルでは、お客様に長時間滞在していただき、追加注文を促すことで客単価を上げる戦略が一般的でした。しかし、これには人件費と家賃という固定費の重い負担がついて回ります。

席数30席の店舗で客単価3000円を目指す場合と、立ち食い20席で客単価1200円を目指す場合を比較してみましょう。前者は回転率2回転で日商18万円、後者は回転率8回転で日商19.2万円となります。

固定費の構造が全く違うのです。高単価店では接客サービス、空間演出、調理の複雑さなどで人件費が膨らみがちです。一方、低単価高回転店では、シンプルなオペレーションで人件費を抑制できます。

この違いを理解せずに「客単価を上げれば利益も上がる」と考えてしまうのは、ビジネスモデルの設計を見落としているのかもしれません。

低単価店が絶対に守るべき3つの数字

低単価で高利益を実現するためには、通常の飲食店以上に数字の管理が重要になります。

原価率は25%以内を徹底することです。客単価が低い分、原価率の1%の違いが利益に大きく響きます。仕入れの最適化、ロス率の削減、メニュー設計での原価コントロールが必要不可欠です。

人件費率は20%以内を目安にします。高回転を支えるシンプルなオペレーションの設計が鍵となります。複雑な調理工程、過度な接客サービスは人件費を押し上げる要因です。

FL比率(原価率+人件費率)は45%以内に収めることで、家賃や諸経費を考慮しても適正な利益を確保できます。

ある都内の立ち食い焼肉店では、この3つの数字を徹底管理することで、客単価1500円ながら月商800万円、営業利益率15%を実現しているという話を聞いたことがあります。

客数を増やすために今すぐできること

低単価高回転モデルへの転換を考えるなら、まず現状の数字を正確に把握することから始めてください。

1日の客数と平均滞在時間を1週間測定してみましょう。ピークタイムとアイドルタイムでの客席稼働率、注文から提供までの時間、会計から次の客様着席までの時間を記録します。

メニュー別の提供時間も測定してください。調理に時間がかかるメニューが回転率を下げている可能性があります。

オペレーションの見直しでは、注文方法の簡素化、調理工程の標準化、会計システムの効率化を検討します。券売機やセルフオーダーの導入も回転率向上の選択肢です。

ただし、急激な変更は既存のお客様を混乱させるリスクもあります。まずは忙しい時間帯の効率化から始めて、徐々に全体のオペレーションを見直していくのが現実的です。

客単価の高低ではなく、お客様に喜ばれながら適正な利益を確保することが飲食店経営の本質だと思います。