『人手不足』と嘆く前にチェックすべき3つの盲点|本当の原因はシフトの組み方にある
人手不足で悩んでいる飲食店の店長へ。もしかすると、本当に人が足りないのではなく、今いるスタッフの力を活かし切れていないだけかもしれません。
人手不足の88%は「配置ミス」が原因だった
厚生労働省の「飲食サービス業の雇用動向調査」(2023年)によると、人手不足を訴える店舗の88%で、実際の労働時間を分析すると「適正人数は確保されている」ことがわかったそうです。
問題は人数ではなく、シフトの組み方。ピーク時間に人が足りず、アイドルタイムに人が余る。この配置のミスマッチが「人手不足感」を生んでいるらしいです。
ある都内の居酒屋(25席)では、週末の19時台にホール1名、キッチン1名で回していたところ、お客様をお待たせしてクレームが頻発していました。「人を増やすしかない」と思っていた店長でしたが、平日の14時台には3名配置している現実に気づいたそうです。
では、なぜこのような配置ミスが起きるのでしょうか?
時間帯別の売上データを見ていますか?
多くの店長が陥る罠は、「感覚」でシフトを組んでいることです。
「平日の昼間は暇だから1人で十分」「週末の夜は忙しいから3人必要」。この判断の根拠は、実は曖昧な記憶に過ぎないことが多いのです。
実際に時間帯別の売上データを取ってみると、意外な発見があります。平日の15〜17時が想像以上に忙しく、週末の21時以降は思ったほど客数がないケースも珍しくありません。
らくしふが2023年に実施した調査では、シフト管理システムを導入した店舗の72%で、導入前の「予想ピーク時間」と実際の「売上ピーク時間」が1時間以上ずれていたそうです。
感覚と現実のギャップ。これが配置ミスの第一の原因です。
1人あたりの生産性を計算していますか?
人手不足感のもう一つの原因は、スタッフの生産性を把握していないことです。
時給1,000円のスタッフが4時間働いて、その間の売上が8,000円なら、人件費率は50%。これでは店の利益を圧迫します。一方、同じスタッフが同じ4時間で16,000円の売上を作れば、人件費率は25%になります。
問題は人数ではなく、1人あたりがどれだけの売上を作れているか。この視点が抜けていると、「とにかく人を増やす」という発想になってしまいます。
ある焼肉店(40席)の店長は、こんな経験をしたそうです。金曜日の19時台、ホール3名で対応していたものの、お客様から「注文を取りに来ない」とクレームが入りました。店長は「人手が足りない」と判断し、土曜日は4名に増員。しかし売上は前日とほぼ同じでした。
よく観察してみると、3名の動きに無駄があることに気づいたそうです。1名がオーダーを取りに行っている間、残り2名がレジ周辺で待機している時間が目立ちました。動線を整理し、役割分担を明確にしただけで、3名でもスムーズに回るようになったらしいです。
人を増やす前に、今いるスタッフの動きを最適化する。これだけで人手不足感が解消されることも多いのです。
「辞めない仕組み」は作っていますか?
3つ目の盲点は、せっかく採用したスタッフがすぐに辞めてしまうことです。
日本フードサービス協会の調査(2023年)によると、飲食業の離職率は72.8%。つまり、10人採用しても7人が1年以内に辞めてしまう計算になります。
人手不足を「採用の問題」だと考えている店長は多いですが、実は「定着の問題」であることが大半です。月に2名採用しても、同じペースで辞められたら人数は増えません。それどころか、採用コストと教育コストが無駄になります。
ある中華料理店(15席)では、1年間で18名のアルバイトを採用したにも関わらず、年末時点でのスタッフ数は期初と変わらない6名だったそうです。採用にかけた費用は約54万円(1人あたり3万円×18名)。これに加えて、新人教育にかかった時間を時給換算すると、さらに30万円程度のコストが発生していました。
この店長が取り組んだのは、採用強化ではなく定着率の改善でした。シフトの希望提出を紙からLINEに変更し、急な変更時の連絡を自動化。さらに、新人には最初の1ヶ月間、必ずベテランスタッフとペアを組ませる制度を導入したそうです。
結果、翌年の離職率は38%まで改善。採用コストも半分以下になり、店長がシフト管理に費やす時間も月20時間から5時間に短縮されたそうです。
採用よりも定着。この発想の転換が人手不足解消の鍵かもしれません。
明日から試せる3つのチェックポイント
人手不足だと感じたら、まずは以下の3点をチェックしてみてください。
1. 時間帯別売上データの確認 レジのデータを見て、実際のピーク時間を把握する。感覚ではなく、数字で判断する習慣を作りましょう。
2. スタッフ1人あたりの売上計算 各時間帯で、スタッフ1人が何円の売上を作っているかを計算。人件費率30%を目安に、配置人数を見直してみてください。
3. 離職率の把握 過去6ヶ月で何人が辞め、何人が新しく入ったかを整理。離職率が50%を超えているなら、採用より定着に力を入れた方が効果的です。
人手不足は、多くの場合「人手の使い方不足」です。今いるスタッフの力を最大限に活かす仕組みを作ることから始めてみてください。まずは明日、時間帯別の売上データを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。