飲食店の働き方改革が失敗する3つの理由と、成功への現実的なアプローチ
月末の金曜日、またシフト表を前に頭を抱えている。
スタッフからの「来月のシフト希望、まだ出してないです」という連絡。急な欠勤の穴埋めで走り回る日々。気がつけば自分も週6日働いている。
「働き方改革」なんて言葉を聞くたびに、正直ため息が出る。理想論ばかりで、現場の現実が見えていない。
なぜ飲食業だけが働き方改革から取り残されるのか
厚生労働省の調査データを見ると、飲食業の働き方改革がいかに遅れているかがわかる。
有給休暇取得率は49.1%。全産業平均の62.1%を大幅に下回っている。さらに深刻なのは、スタッフが辞める理由の第2位が「長時間労働」(38.3%)だということだ。
でも、これは単に「飲食業だから仕方がない」という問題ではない。実は働き方改革が失敗する構造的な理由が3つある。
多くの店長が気づいていないが、この3つを放置している限り、どんなに理想を語っても現場は変わらない。むしろ悪化することもある。
失敗理由1:シフト管理が店長の属人的作業になっている
ある駅前の居酒屋(25席)の店長から聞いた話だそうです。
毎月末になると、シフト希望の回収に追われる。LINEで催促しても返事がない。紙で渡したシフト希望用紙は読みにくくて、転記するだけで2時間かかる。結局、月のシフト作成に15時間も費やしているとのこと。
この店長は「バイトがだらしないから」と考えていたそうですが、実は問題はシステムにあった。シフト提出の締切が曖昧で、フォーマットもバラバラ。店長が全てを一人で抱え込む構造になっていた。
だからこそ、働き方改革の前に「仕組み化」が必要なんです。
シフト管理が属人的な作業になっている限り、店長の労働時間は減らない。スタッフも「店長がやってくれる」という甘えが生まれる。これでは誰も幸せになれない。
失敗理由2:人手不足を「根性」で乗り切ろうとしている
調理・仕込み業務で従業員不足を感じる店舗が50.6%。
特に串揚げ業態では顕著で、本来3〜4名×3時間で終わる仕込みが、1〜2名×6時間に延びてしまうケースも珍しくないらしいです。これが早期離職を招く悪循環を作っている。
でも、ここで多くの経営者が間違えるのは「もっと頑張れ」「根性が足りない」という精神論に走ってしまうこと。
実際は、仕組みの問題です。
ある串焼き居酒屋では、昼間の主婦層3名で仕込み部隊を結成したところ、社員のシフト固定化が解消され、交代で休暇取得が実現したそうです。問題は「人が足りない」ことではなく「配置の仕方」だったということですね。
人手不足を根性で乗り切ろうとする限り、働き方改革は絵に描いた餅になる。
失敗理由3:「閉店作業の効率化」という低いハードルを無視している
長時間労働の解消で最も効果的なのは、実は閉店作業の効率化だ。
なぜなら閉店作業は毎日発生するルーティンワークだから。ここを1時間短縮できれば、月30時間、年間360時間の労働時間削減につながる。
ある80席のイタリアンレストランでは、ECRS原則(排除→結合→交換→簡素化)を適用して、閉店作業を1時間30分短縮したという事例もあるそうです。
でも、多くの店長がこの「すぐできること」をやらない。
理由は簡単。地味だから。「働き方改革」と聞くと、何か大きなシステム変更や投資が必要だと思い込んでしまう。実際は、清掃手順を見直すだけでも大きな効果が出る。
毎日の積み重ねこそが、働き方改革の本質なんです。
明日から始められる3つのアクション
働き方改革を成功させるには、大きな投資や劇的な変化は必要ない。
まず、来週から試してほしいのは以下の3つです:
1つ目は、シフト希望の締切を「見える化」すること。LINEのタイムラインやホワイトボードに「○月○日まで」と明記する。これだけで催促の頻度が激減します。
2つ目は、仕込み作業の時間を測ること。「なんとなく3時間」ではなく、実際に測定してボトルネックを見つける。意外な発見があるはずです。
3つ目は、閉店作業のチェックリスト化。誰がやっても同じ時間で完了できる手順書を作る。これで属人化が解消され、早番・遅番のローテーションが組みやすくなります。
どれも今日から始められることばかり。大切なのは「完璧を目指さず、まず1つずつ」という姿勢です。
働き方改革は理想論ではなく、日々の小さな改善の積み重ね。あなたの店でも、きっと変化を実感できるはずです。